- SEP
- 28
- 2018
山下公園のお父さん、ベンチで待ってるね。〜祈り〜
山下公園で、毎朝5時から、
海を見ながら、ベンチに座ってるおじいちゃん。
毎朝5時から、ずーっと座ってて、
6時を過ぎると、おじいちゃんの、お仲間が二人来て、
楽しそうに「俺たち、毎日、病気の話ばっかだよ」とおしゃべり。
おじいちゃんのお友達は、ガンの放射線治療に通ったりもしてるのだけど、
それでも、みんな病院がない日には、毎朝3人で集まって、おしゃべりしている。
そして、犬が来ると、ワンちゃん達にオヤツをくれて、
「今日は、女の子のお友達もう、あっちへ行ったよ」とか、
「最近、耳の長いお友達、来ねえな?元気か?」とか、
いつも、気にかけてくださった。
うちの久太朗の、中性脂肪の値が高くなりすぎたり、
くぅちゃんが、丸々と太っちゃったり、
エピちゃんが、肝臓が悪いのが見つかったりすると、
「最近、犬達が、みんな、どっか悪くなって、誰もオヤツを食えねえんだよ。中性脂肪やら、肝臓やらよ〜。」
と、笑いながらボヤいたりしていた、お父さん。
6時を過ぎると、お母さんが、
ラジオ体操のラジオを持ってやって来る。
お母さんとは、ベンチを隔てて座り、一緒には座らない。
お母さんは、お母さん達とおしゃべり、
お父さんは、お父さんたちとおしゃべり、
それでも、たまに、ベンチ越しに、
「おい、お前、昨日の夜、いつ帰ってきたんだよー?」
「うーん、8時頃ですかねぇ?」
「おまえよー、お湯わりのお湯がなくなっちゃってよ〜」
とか、お父さんが言うと、
「お湯くらい、自分でやりなさいよー!!!」と、他のおばあちゃん達から、非難をゴーゴー浴びたりしちゃって。(笑)
私が「お父さん、ばあちゃん達に、怒られてますよ。」と言ったら、
「お湯わりのお湯がねぇ〜んだからよ〜」とボヤいて、
ばあちゃん達の、非難ゴーゴーは、全部スルーしたりして。
それでも、お母さんが、優しく丁寧に、
「お湯は赤のところで、水は青のところで、、、」とか、一生懸命、説明しても、
「俺は、そんなん知らん、おまえがやっとくれ」と言う態度で、
もう、すでに、お母さんの話を聞いてなかったりして、
私は「このご夫婦は、こうやって会話をするんだな〜」と微笑ましく眺めていた。
そして、ラジオ体操の時間になると、お母さんは体操へ、
お父さんは、お家に向かって、歩き出す。
一緒に来ないし、一緒に帰らないけど、それが毎日の日課だ。
5月1日から、5ヶ月。
そうやって、毎日、お父さんの顔を見てきた。
おはようございます、と挨拶して、
久太朗とマメ太がオヤツをもらい、
少し、病気の話をして、
少し、天気の話をして、
少し、お友達の話をして、
少し、飲み屋さんの話をして、 と。
そして、つい三日前も、ベンチに座って、
「俺よ〜、ペットって検査したんだけど、どっこも悪くねぇ〜んだ〜」と、無駄に検査をしたけど、悪いところが1つも無いことを、ボヤいていたお父さん。
悪いとこがなくて、良かったじゃないですか〜って笑ってたのに。
倒れた。
お風呂から出て、倒れた。
血圧が低くて、お風呂から出て、倒れたから、もう、時間の問題だと言う。
ばあちゃん達は「もう待つだけだ。しょうがない、もう、できることはないから、待つだけだね、時間の問題だ。三日なのか、1週間なのか、待つだけ。」と言う。
そんな〜、
そんな〜、
そんな〜、
私、山下公園のベンチで待ってます。
じいちゃん、帰ってきてよー。
みんな、待ってるよー。
みんな、待ってる。
久太朗 マメ太 ミク モモコ エピ ササミ くぅちゃん みんな待ってるよー。
みんな、山下公園のベンチでお父さんの姿を探しています。
りずむK